ブログ
融資のときに銀行がみる決算書ポイント その5
今回は「損益計算書」について、ご説明をさせていただきます。
前回までは「貸借対照表」の説明をしてきましたが、「貸借対照表」は会社の財産を確認するためのものでした。債務超過の状態ですと融資に不利で、そのための対策を勘定科目ごとにご紹介させていただきました。
「損益計算書」は「貸借対照表」と違い、経営成績を確認するためのものです。
簡単に言うと「もうかっているか。」を確認するための資料となります。
融資側では、融資する会社の売上規模、売り上げから原価を差し引いた売上総利益(粗利益)、売り上げをあげるために必要となる販売管理費、営業以外にかかった費用や収入などを確認します。
この「損益計算書」でも、勘定科目ごとに大切なポイントがあり、また各項目での利益内容によっても融資の判断として大変重要な内容がございます。
これから一つ一つご説明させていただきます。
どうぞ、ご参考くださいませ。
【損益計算書の仕組み】
損益計算書は大きく分けて下記の内容となります。
次回に表などを活用してご説明させていただければと思いますが、事前に文言の説明をさせていただきます。
専門的な部分もございますが、内容を理解できれば融資申し込みの際に融資担当者に対して強い武器となります。
売上高
売上高は、商品や製品の販売またはサービスの提供などにより得る金額です。
事業活動をするための一番重要なものです。
こちらが計上されないことには事業として成り立ちません。
融資側ではこの売上高がいくらかで会社の規模を判断します。この規模で融資可能な大体の規模を把握していると考えられます。
売上原価
売上原価は、売り上げを計上するために必要となった商品の仕入れや製品の製造料、サービスを提供するために直接必要となった外注費や人件費などが該当します。
つまり、売り上げを計上するために必要となる経費です。売り上げが大きくなれば、この売上原価も大きくなります。逆に売り上げが低ければ売上原価も低くなります。
売り上げの金額の大きさによって変動する経費です。
変動費と言います。
売上総利益
売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた残金です。
売上高 - 売上原価 = 売上総利益
ビジネス上では、「粗利」と言われることが多いです。
この売上総利益がマイナスになっている場合には、事業として成り立っていないこととなります。融資側ではマイナスの場合、かなり厳しい評価となります。早急に対処しないといけません。
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、事業をするにあたって必ず必要となる経費です。
代表的なものとして、下記のものがございます。
役員報酬、給料手当、賞与、法定福利費、福利厚生費、接待交際費、会議費、
旅費交通費、消耗品費、通信費、地代家賃、リース料などなどです。
こちらは売上原価とは違い、売り上げが計上されていてもされていなくても必ず必要となる経費です。
固定費と言います。融資側ではこの固定費を確認し、この経費以上に利益を出せているか注視します。
営業利益
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた残金です。
売上総利益 - 販売費及び一般管理費 = 営業利益
こちらの金額がマイナスである場合には、売上総利益が低すぎるのが原因となります。
考えられる要因は売り上げの単価が低すぎるか、売上原価が高すぎるかの場合です。
粗利率が悪い状況ですので、売上単価を見直すか売上原価を抑える方法を検討しなければなりません。
事業計画を立てる上でこの販売管理費及び一般管理費以上の売上総利益が出ていない場合にはご注意ください。
営業利益がしっかりプラスで出ていればとりあえずは安心できます。
マイナスの場合には、プラスになるように計画的に対策を立てていく必要がございます。
営業外収益
営業外収益は、事業活動以外で発生した収入のものです。
会計上ではよく下記のものがございます。
受取利息(普通預金、定期預金からの利息です)、為替差益(外貨などの為替変動により得る利益です)、有価証券利息(株式などの投資で得る利息)、受取配当金(株式などの投資で得る配当金)
これらは事業活動とは別で得るものになりますが、偶発的に発生するものでもなく事業をしていれば継続的に得るであろう利益になります。
営業外費用
営業外費用は、事業活動以外で発生した支出です。
会計上ではよく下記のものがございます。
支払利息(融資額に対して支払う利息です)、為替差損(外貨などの為替変動によりでる損失です)、
これらは事業活動とは別で発生する経費です。ただ、偶発的に発生するものではなく事業をしていれば継続的に発生する経費です。
経常利益
経常利益は、営業利益から営業外収益を加算し、営業外費用を引いた残金です。
営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 = 経常利益
こちらの金額は事業活動以外の収益と費用も踏まえた利益金額となります。
プラスである方が融資での判断でも当然有利に働きます。
経常利益と営業利益では営業利益の方が重要度は高い印象ですが、経常利益のマイナスが続いているようでしたら注意が必要です。
特別利益
特別利益は、事業活動により発生したものでなく一時的に発生した臨時的な利益です。
持続化給付金や家賃支援給付金もこちらの特別利益に該当することになります。
それ以外にも不動産などの有形固定資産を売却した際の固定資産売却益、有価証券(長期保有目的)を売却した際の有価証券売却益、税務署等からの還付金に加算される還付加算金などがございます。
この特別利益が多くなったために最終の利益がプラスであったとしても、融資での評価は高くなりません。融資側ではあくまで、事業活動でどうだったかが重要となります。
特別損失
特別損失は、事業活動により発生したものでなく一時的に発生した臨時的な損失です。
不動産などの有形固定資産を売却した際の固定資産売却損、もしくは除却した場合には固定資産除却損、有価証券(長期保有目的)を売却した際の有価証券売却損、事業活動により発生した事故などによる損害金、訴訟関係があったことによる損害賠償金、災害があったことによる損害金などがございます。
これらをイメージしていただくと事業活動とは関係のないものがそれに該当するとイメージいただきやすいかと思います。
税引前当期純利益
税引前当期純利益は経常利益に特別利益を加算し、特別損失を引いた残金です。
経常利益 + 特別利益 - 特別損失 = 税引前当期純利益
この税引前当期純利益は法人税などの税金を差し引く前の利益金額です。
この利益金額を基に税金が計算をさせれます。
この利益がプラスであるかマイナスであるかを融資の際に確認をされますが、この利益がでるまでに上記のような過程があるため、単純に「プラスだから融資で有利になる。」「マイナスだから融資で不利になる。」ということにはなりません。
ここまで読んでいただきましたらご理解いただけると思います。
法人税等
決算における1事業年度の税金額となります。
基本的に利益が多ければ多いほど、税金は高くなります。
ただ、もうかった以上に納税が発生することはないので、原則、納税しても会社にお金は残る仕組みとなっています。
当期純利益
当期純利益は、決算書上の最終の利益金額となります。
経営者様の気持ちとしてはこちらの利益がプラスであるかマイナスであるかで気分が大きく違うかと思います。
融資だけで見ると、こちらの利益よりは営業利益、経常利益が重要となります。
しかし、当期純利益がプラスであるということは事業活動でもうかったかそうでないかは別にして、とりあえずは乗り越えることができたと考えられるので経営者目線では次年度のモチベーションにつなげるためにもプラスで終えたいものです。
今回は以上となります。
今後も、融資を受けるために少しでも皆さまのお役に立てる情報を提供して参りますので、ご参考いただければ幸いです。