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融資のときに銀行がみる決算書ポイント その6
今回も「損益計算書」について、ご説明をさせていただきます。
前回は「損益計算書」の勘定科目ごとに大切なポイントと各項目での利益内容などをご説明させていただきました。
融資の際に当期と前期の比較で数字に大きな動きや普通ではありえない数字の変動がある場合には、必ず融資担当者より質問を受けることになります。
次は融資担当者から質問をされ、それに対してどのように回答することが望ましいかなどをご説明させていただきます。
どうぞ、ご参考くださいませ。
【損益計算書の当期と前期の比較】
当期と前期を比較して、当期の数字が悪い場合には融資担当者は必ずその原因を確認します。
経営者様としては融資担当者へ数字の変動原因をしっかり説明できるように準備しておく必要がございます。
これから各項目に応じて、説明をさせていただきます。
中には難しい内容もございますが、数字をしっかり把握しておくことはとても重要なことです。融資を受けるためだけでなく会社が成長し成功していくためにも必須項目ですのでご参考いただければと考えています。
売上高
売上高は、商品や製品の販売またはサービスの提供などにより得る金額です。
こちらの金額が前年と比較して減少している場合には、融資担当者よりその理由説明を求められます。現在では、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、売り上げが減少傾向にある経営者様が多いかと考えられますが、通常の事業活動で売り上げが減少した場合には
下記のような理由などが考えられます。
・大口の得意先との取引がなくなった。
・競合他社との影響で売り上げが減少した。
・会社規模を縮小したため、取引規模も縮小させた。
このような原因の場合に、融資担当者へ説明するにあたって事実を伝えた上でこれからどのように対策をしていくかを説明できるかが重要です。
大口の得意先との取引がなくなったのなら、新規の取引先を増やすために営業をしていることや、小口でも取引先を複数に増やすことで売り上げの確保をしていることなど、取り組み内容を融資担当者へ説明ができればと考えられます。
また、競合他社の影響による場合でも同じように、自社の独自性を強みに営業力で競合他社に負けないようにどう取り組むかを説明してもらう必要がございます。
売り上げが減少しているだけで困っているから融資を受けたいでは融資実行の可能性は高くなりません。売り上げを増加させるためにどのように対策をするかを具体的に伝えられるように事業計画を立ててもらうことが大切です。
売上原価
売上原価は、売り上げを計上するために必要となった商品の仕入れや製品の製造料、サービスを提供するために直接必要となった外注費や人件費などが該当します。
前回にもご説明しましたが、売り上げが増加すれば売上原価も増加し、逆に減少すれば売上原価も減少します。
前期との比較で売上原価が大きく増減していれば融資担当者からその理由が質問されます。また、売上原価は次に説明する売上総利益の前期比較での変動比率に着目されます。
下記のような理由などが考えられます。
・材料単価が増加した。
・為替レートの変動により、売上原価が増加した。
・人員の入れ替えで生産性が落ち、人件費が増加した。
・売り上げ増加を見込んで、多く仕入れをした。
こちらでも原因となる事実をしっかり説明し対策を伝える必要がございます。
材料単価が増加したのが原因でしたら、単価を下げられるように交渉するか新しい取引先を探すか、または販売単価を上げられるようにするかなどの対策が説明できればと考えられます。
人員の入れ替えで生産性が落ちたことが原因でしたら、社員教育がどういう状況で過去の実績から教育にどのくらいの期間が必要かを融資担当者へ説明し、いつからだったら売上原価を適正な金額まで下げられるか具体的に説明いただければと思います。
将来の売り上げ増加を見込んでの取り組みでしたら、その判断にいたった根拠と現時点の状況を説明しどのくらいで目標とする売り上げまで持っていけるかを説明できるように準備いただければと思います。
それぞれの原因に応じて、対策を説明できるように事前準備が大切です。
間違っても、仕入れ先が困っていたから多めに仕入れをしたなどの理由は融資担当者への説明として相応しくないので、ご注意ください。
売上総利益
売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた残金です。
この金額が多いか少ないかで、経営が上手くいくか行かないかの大きな分かれ目となります。
融資担当者も前期と比較してどのように変動しているか、事業の仕組みとして問題ないか重要項目となるので厳しく確認をしてきます。
前期との比率も重要ポイントとなるので、あわせて確認が必要です。
考えられる原因は先ほどの売上高と売上原価の増減理由がそのままこちらの利益率に影響を与えます。
売上総利益が前期と比べて落ちている理由の説明として例えば、
「大口の得意先との取引がなくなってしまい、在庫を抱えるリスクを回避するために、既存の取引先や新しい取引先に対して安い金額で販売をした。今後の対策として販売価格を値上げするか、仕入れ単価を下げるように取り組みます。」
「円安の影響で仕入金額が予想より大きくなりました。今後の為替変動を見るにこれ以上の円安にはならないと考えています。今回の仕入金額をベースに販売価格の見直しや、国内での仕入れに切り替えられるか、輸入後の国内でのコスト削減に取り組むようにしていきます。」
「競合他社による影響が大きいです。今後は自社の強みである○○を前面に出して他社との差別化を図り、かつ、強みを活かして新しい販路開拓や新商品の開発に取り組んでいきます。」
こういった内容をご説明ができれば融資担当者も融資実行に向けて取り組んでいただきやすいと考えられます。
不景気だからしょうがないや新型コロナウイルス感染症による売り上げ減少が原因などとざっくり判断するのではなく、もう一歩踏み込んでなぜ数字が悪くなっているのかを把握するようにしていただくのが重要です。
融資担当者へ現状を説明し、それに対してどのように改善をしていくかの説明が大切となります。融資側も大切なお金を融資するわけなので返済をしてもらえる先でないと積極的に取り組もうとは思ってもらえません。
今回は売上高、売上原価、売上総利益の当期と前期の比較のポイントをご説明させていただきました。
次回も「損益計算書」での各項目を説明して参ります。
ここまで、読んでいただくとご理解いただけるかと思いますが、融資担当者への説明にあたり経営者様は実態の数字をまずは理解することが大変重要です。
その上で、対策・改善案を検証し融資担当者へ説明をするのが大原則です。
融資担当者へ説明するにあたり、ざっくりで数字を説明することは絶対に避けなければなりません。
また、融資を受けたいがために融資担当者へ嘘を伝えて融資を受けるということは絶対にしないようにお願いできればと思います。
弊所では、経営者様の数字の変動にも注視し、問題がある場合には経営者様へ確認させていただき、その原因を追究していきます。
中には経営者様が気づいていない数字の変動もあり、一緒に対策をお話しさせていただくことも多くございます。
今回は以上となります。
今後も、融資を受けるために少しでも皆さまのお役に立てる情報を提供して参りますので、ご参考いただければ幸いです。