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融資のときに銀行がみる決算書ポイント その7
今回も「損益計算書」について、ご説明をさせていただきます。
前回同様に融資の際に当期と前期の比較で数字に大きな動きや普通ではありえない数字の変動がある場合には、必ず融資担当者より質問を受けることになります。
この数字の変動について融資担当者へ説明するにあたり原因として見られる例題をご説明させていただきます。
例題のように原因を経営者様が理解できていることが大切なことですので、どうぞ、ご参考くださいませ。
【損益計算書の当期と前期の比較】
当期と前期を比較して、当期の数字が悪い場合には融資担当者は必ずその原因を確認します。
経営者様としては融資担当者へ数字の変動原因をしっかり説明できるように準備しておく必要がございます。
これから各項目に応じて、説明をさせていただきます。
中には難しい内容もございますが、数字をしっかり把握しておくことはとても重要なことです。融資を受けるためだけでなく会社が成長し成功していくためにも必須項目ですのでご参考いただければと考えています。
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、事業をするにあたって必ず必要となる経費です。
代表的なものとして、下記のものがございます。
役員報酬、給料手当、賞与、法定福利費、福利厚生費、接待交際費、会議費、
旅費交通費、消耗品費、通信費、地代家賃、リース料などなどです。
こちらは売上原価とは違い、売り上げが計上されていてもされていなくても必ず必要となる経費です。
前期と当期の比較で増減を勘定科目ごとに考えられる例題を上げていきます。
給料手当が前期より当期の方が増加している場合
・売上の増加を目指して営業の人員を○名増加したためです。
それにより人員を増やすことにより売り上げ先が○件の新規取引を得ることができました。
給料手当が前期より当期の方が減少している場合
・取引規模以上に人員が多いことで会社に利益が残らない状態でした。
その対策として、従業員のうち退職を希望する人を募りました。
希望する従業員が○名おり、その分の人件費が減少しています。
接待交際費が前期より当期の方が増加している場合
・新規の取引先様との接待のために増加しました。
・新商品の商談のために増加しました。
・お中元とお歳暮をお贈りする先が増えたために増加しています。
接待交際費が前期より当期の方が減少している場合
・新型コロナウイルス感染症の影響で外食へ行くことができなくなったためです。
・経費削減のために接待交際費の予算を減らしました。減らしたことによる売り上げに対する影響は今のところ見えていませんので、財務改善できたと考えています。
旅費交通費が前期より当期の方が増加している場合
・販路開拓のために営業エリアを拡大しました。継続して予算を確保する予定ですので来期以降も同水準で営業活動を続けていく考えです。
・従業員の増員にあたって通勤のための定期代が多くなったのが原因です。
地代家賃が前期より当期の方が増加している場合
・前期に使用していた工場が手狭になったために、移転しました。
工場が大きくなったので生産性が○%アップしています。
・営業エリアを拡大するために支店を設けました。
地代家賃が前期より当期の方が減少している場合
・売り上げ減少に伴い資金確保のために、店舗を減らしたためです。
営業率の高い店舗のみを稼働しているため、財務的には改善傾向にあります。
・前期に使用していた物件の家賃が高すぎたので、同じエリアで低い家賃へ移転をしました。
消耗品費・減価償却費が前期より当期の方が増加している場合
・新設備を購入したため減価償却費が前期よりも増加しています。
そのため、生産性が○%改善がされています。
設備に資金を投入した際に必要な備品関係も多く購入しているため消耗品も増加しています。
・営業用の車を購入したため減価償却費が増加しています。
電車での移動より効率よく営業先へ向かうことができるので、今後も購入台数を増やしていく予定にしています。
保険料が前期より当期の方が増加している場合
・経営者が事故や病気となった際に、会社の利益を確保することができなくなる恐れがあります。
保険金を活用してリスクを回避するために新しく保険に入りました。
以上が販売費および一般管理費が増減するときにありえるケースです。
これら以外にも事業をしていると増減の理由はいくらでも出てきますので、一つの参考になればと思います。
営業利益
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた残金です。
前期と比較して当期の方が営業利益が低い場合には、まずは営業総利益の増減から確認することになります。その次に上記で説明しました販売費および一般管理費の増減が原因となります。
販売費および一般管理費だけ見ると、利益が減少する理由としてはこの経費が増加しているから以外にはありえません。
なぜ販売費および一般管理費が増加したのかを融資担当者へ説明をし、その理由が納得できるものでしたら融資担当者も融資実行に向けて取り組みやすくなります。
経営者様は会社の数字をどれだけ把握できているかが大切です。
よっぽど利益を出し続けている会社でないと融資側では前向きには取り組んでもらいにくいです。
営業外収益
営業外収益は、事業活動以外で発生した収入のものです。
前期と当期の増減で大きな変動がある場合には融資担当者へ説明をする必要があります。また、事業活動以外で発生するものではありますが、事業をしていれば継続的に得られる利益ですので融資担当者も異常な変動がある場合には原因を確認します。
営業外費用
営業外費用は、事業活動以外で発生した支出です。
先ほど説明しました営業外収益と同じです。
事業活動をしていれば継続的に発生するものですので前期と比較して異常な数字であれば融資担当者は原因を確認します。
経常利益
経常利益は、営業利益から営業外収益を加算し、営業外費用を引いた残金です。
融資担当者はここまでの利益を重要視しています。前期と当期の差額について注意深く原因を確認されます。
事業活動をするにあたっての結果が経常利益で確認することができるためです。
これ以降のものは特別利益、特別損失になりますが、前期と比較して大きな変動があったとしてもそれについては臨時的な原因が多いので、経常利益よりは注目されることは低いと考えています。
ただ、会社の財務内容に大きな影響を与えるような変動がある場合にはしっかりと原因を追究しなければなりません。
今回は以上となります。
融資担当者は会社の前期と当期の変動に敏感です。
ネガティブな数字の変動はしっかり原因を説明し、その改善方法もあわせて説明できるように準備しておくことが大切です。
前回にもお伝えしましたが融資担当者に対して嘘を言うことは絶対に避けていただきたいと考えています。
貸借対照表の説明の時にも伝えましたが簿外の負債があっても融資担当者は気づきにくいのが正直なところです。
ただ、会社を経営していくにあたり簿外のものが存在するのは望ましくありません。また、何かのきっかけで融資担当者が把握できた際には今後の会社経営に大きな問題となります。
必ず、正しい数字の基に事業活動を進めていただければと考えています。
今後も、融資を受けるために少しでも皆さまのお役に立てる情報を提供して参りますので、ご参考いただければ幸いです。