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融資のときに銀行がみる決算書ポイント その4
前回に続き「貸借対照表」の勘定科目で重要なポイントと対策をご説明させていただきます。
今回は負債関係を説明致します。今まで説明をしました資産関係とは違った注意が必要です。負債関係も勘定科目ごとに性格が違い、融資側へ説明する内容も違ってきます。
原則は負債が少ない方が財務内容がよくなるので、少ないに越したことはないです。
専門的な話しもございますが、皆さまにとって有益な情報になればと思いますので、どうぞ、ご参考くださいませ。
こちらの章をご覧いただく場合には「融資のときに銀行がみる決算書ポイント」を掲載していますので、最初から読み進めていただければ理解も深まります。
どうぞ、ご参考くださいませ。
負債関係は会計では、買掛金、未払金、借入金など会社に支払い義務があるものです。
また、これら以外にも前受金など取引先から先にお金をあずかるものも負債に該当します。
この負債の内容を勘定科目ごとに説明し、融資側への説明内容もご紹介できればと考えています。
・買掛金
買掛金は商品などを仕入れた時に未払いの場合に使用する勘定科目です。売り上げに直結する仕入れで、未払いのものを買掛金として勘定目を計上します。
この買掛金の残高が多いと融資側では不自然な状態として判断してきます。
毎月の仕入れで各仕入れ先の締め日と支払日を確認し、決算書上の買掛金残高は正常な金額かどうか確認します。買掛金の残高が多い場合には、様々な事象が推測されます。
例えば、買掛金の金額が仕入高の2、3カ月以上の残高がある場合で棚卸資産の金額が少額、売掛金の金額も少額の状況だと、販売価格を低く設定しすぎていることが考えられます。
また、現預金もあまりない場合には販売価格の設定を低くしていることによる、資金繰り悪化が理由として考えられます。
この状態だと融資を受けたとしてもすぐに資金繰りが厳しくなることとなります。融資側としてもこの販売価格の改善が見られないと融資実行の判断はしにくくなります。
決算書上の買掛金が2,3カ月以上の残高になっている場合は他のケースでもあり得ます。
業種によっては決算月が繁忙期で売り上げをアップするタイミングだとすると決算月前に商品を大量に仕入れることがあります。大量に仕入れることにより買掛金の残高が高くなり、決算後の翌月に支払うことがあります。
こういった場合には融資側では正常な状態と判断してくれます。
その他の細かいケースで言いますと、買掛金の支払日が土日祝日で支払日が翌月になってしまったケースです。このケースも融資側では正常な取引として判断してくれます。
融資側からの質問で間違っても、資金管理不足で支払いが厳しくなっているなどの理由は説明として避けるべきです。事実だとしても、今後は資金繰りが解消されるように融資を受けて今以上に資金を増やして改善していくことを説明できるようにしていただければと思います。
・未払金、未払費用
先ほどの買掛金以外のもので、支払いができていない状態の時に使用する勘定科目です。売り上げと直結しないものにあたります。例えば、未払金ですと地代家賃、クレジット払いのもの、給与などがあります。未払費用だと水道光熱費やリース料などです。
融資側では決算書に未払金や未払費用が多く残っていると、理由を確認されることがあります。地代家賃、クレジットの支払い、給与の支払いなどができていないと融資側からの心証はかなり悪くなります。またクレジットの支払いができていないと信用取引の情報で金融機関が確認できる取引履歴に問題が発生しているため、融資を受ける可能性が低くなります。
こういった未払い以外にも税金や社会保険料の支払いなども大変重要なポイントです。国へ支払うべきものが支払えていないと、融資を受けられる可能性はかなり低いです。融資の際に融資側へ提示する資料で納税証明書を提出することが多いです。経営者様の中でも確定申告をせずにそのまま放置されている方もいるかと思います。確定申告をしっかりしていないと税金の罰則だけでなく社会的な信用として悪い方向に認識をされるため、注意して取り組んでいただければと思います。
税金の滞納は融資の可能性をかなり低くします。
・前受金
売り上げ先から商品などを渡す前に先に入金をしてもらった際に使用する勘定科目です。
受注生産などの業種だとよく使用する勘定科目になります。また、長期間の工事で売り上げの一部を先に入金される際にも使用します。融資側からはよっぽどイレギュラーなことがない限り、質問には上がってこないと考えています。
・借入金
融資側ではどの金融機関からお金を借りているか、どういった融資内容かを確認します。既存の融資は正常に返済がされているか返済が滞っていないかを確認し、滞っていればその理由と金融機関とどういった話しになっているかの説明が求められます。
現在の借入状況をしっかり整理し、説明できるように準備をしていただければと思います。
借入の中には金融機関からだけでなく、社長などの役員から借り入れをすることも多くございます。設立してから歴が浅いと最初は経営者が手持ちのお金で会社の運営をすることが多いのが一番の理由です。経営者からの借り入れは融資側ではそんなに問題視することはありません。ただ、必要な注意点としまして経営者からの借り入れが多い会社は会社のお金とプライベートのお金をちゃんと管理できていない会社が多いです。この場合には融資側では資金管理ができていないと判断し、心証は悪くなります。このようにならないためにも会社のお金とプライベートのお金は分けて管理をしていただく必要がございます。また、個人のお金を貸しているわけですので、経営者様にとっては早く返済してもらいたいものです。
今回のご説明は以上となります。
負債関係で融資側としては、決算書上に記載されていない負債がないかも確認します。ただ、融資側にとってこちらを発見するのはかなり難しいです。
見つからなければいいという判断で隠すと粉飾にあたります。また、融資側から発見されると今後は融資の取引ができなくなります。
融資を受けるだけの話しではなく、会社の経営が本当に上手くいっているか、事業計画での課題は何かなどは本来の数字を確認した上で考えていくべきです。
今の数字が悪い結果だとしても、将来の利益の見込みや事業拡大に向けての投資など未来に向けてどうしていきたいかを数字で練り上げていくことが原則的に融資を受けるための最善だと考えています。
そこまで考えた上で、融資を受けることができれば当然に資金繰りが楽になりますし、事業も軌道に乗りやすくなります。
前回と同じですが一つ一つ理解することで会社の数字の理解を深めていただきたいと思います。成功されている経営者様は自社の数字をよく理解されている方が多いです。
弊社でもお客様へ数字のご説明を積極的にさせていただいております。
経営者様は本業での営業で手いっぱいになり、数字を理解するのがおろそかになりがちです。細かいところまで全て理解することはできないとしても、ポイントを絞って理解いただくことは大変重要です。
融資を申し込む際にスラスラと事業の数字を説明できる方が融資担当者にとっても安心して融資実行まで話しを進めやすいです。
今後も、融資を受けるために少しでも皆さまのお役に立てる情報を提供して参りますので、ご参考いただければ幸いです。