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2021.10.30

融資のときに銀行がみる決算書ポイント その3

前回は「貸借対照表」の勘定科目で重要ポイントと対策をご説明させていただきました。

今回も融資を申し込む際に、勘定科目ごとに重要なポイントと対策内容をご説明させていただきます。

各勘定科目でそれぞれに意味があり、事業の関連性などをしっかり説明できるように対策しておくことが融資実行のための重要ポイントとなります。

専門的な話しもございますが、皆さまにとって有益な情報になればと思いますので、どうぞ、ご参考くださいませ。

 

こちらの章をご覧いただく場合には「融資のときに銀行がみる決算書ポイント」を掲載していますので、最初から読み進めていただければ理解も深まります。

どうぞ、ご参考くださいませ。

 

 

〔実質、財産性がないもの〕

 貸借対照表上の資産に実質財産として見られないものがあります。

 実質的に財産性がないものと判断して財務状況を確認されると決算書上は債務超過の状態でないのに実質は債務超過であると判断されることがあります。

 下記に勘定科目を上げてご説明をさせていただきます。

 (前回、前々回の続きになりますので、そちらもあわせてご覧ください。)

 

 ・有形固定資産

  有形固定資産は貸借対照表上の勘定科目で、「車両運搬具」「器具備品(パソコンやプリンターなどです。)」「建物」「建物附属設備(パーテーションなど)」「土地」などがございます。この有形固定資産は購入時に経費計上されずに、減価償却という方法で耐用年数に応じて減価償却費が計算され経費計上されます。(土地は非償却資産に該当するため、減価償却されません。)減価償却費により経費計上された分だけ貸借対照表上に計上される有形固定資産の金額(簿価)が減少していきます。

  融資側ではこの有形固定資産に資産価値があるのかどうかを確認します。

  土地や建物は融資側にて調べた時価にて、貸借対照表上の金額を基に含み益があるかまたは含み損となっているかを確認します。

それ以外の有形固定資産は、貸借対照表上の金額を基に資産価値があるかを確認します。ここで注意が必要なのが、資産価値を確保したいためにあえて減価償却費を計上していなかった場合です。減価償却費を計上しなれば貸借対照表上の金額は減少しませんが、融資側では減価償却費の計上不足と判断されます。税務署へ提出する決算申告書類を確認すれば融資側でも簡単に把握することが可能です。

そのため、融資対策としての手段としては意味がないです。

融資側からの心証も良くなく、減価償却費を適正に計上していないことでお企業会計原則に則った経理処理をしていないと判断され決算書の格付けも悪くなります。

 

融資側からの質問として、例えば有形固定資産が前期より増加している場合にその理由を聞かれたとします。前期との数字が変動していれば敏感に反応します。

経営者様にて回答内容に気を付けなればなりません。

 

土地が増えている場合には、「新しく店舗を建設する予定で、○○年オープンを目標に事業計画を立てています。××万円の売り上げ増を見込んでいます。」

 

機械装置が増えている場合は、「生産性を高めるために購入しました。購入することによって生産性が○○%上昇し、今までの機械装置を使用していたより利益率が××%上昇しました。」

 

などの事業計画通りに進めていることやその効果を数字で伝えられるかが大切なポイントとなります。

 

絶対に言ってはならないことは、「よくわかりません。」「部下にまかせています。」などです。

融資側にとっては、経営者様がどれだけ自社のことを理解しているか確認をします。

融資をした資金がちゃんと返済されるか判断するために融資側も慎重になりますので、決算内容をしっかり理解した上で融資の申込みに取り組んでいただければと思います。

 

 

 ・無形固定資産、繰延資産

  無形固定資産や繰延資産は貸借対照表上の勘定科目で、「ソフトウェア」「創立費」「開業費」などがございます。こちらも有形固定資産と同じで購入時に経費計上されずに、減価償却という方法で耐用年数に応じて減価償却費が計算され経費計上されます。減価償却費により経費計上された分だけ貸借対照表上に計上される有形固定資産の金額(簿価)が減少していきます。

  こちらも融資側では資産価値があるかを確認します。

 

  業種によってはソフトウェアにかける資金が多額になる業種もございます。

  貸借対照表上の資産でソフトウェアの金額の占める割合が高ければ融資側では、そのソフトウェアは転売できるものか?自社での利用しかできないものかを確認し転売可能であるならいくらで売却できるかを確認します。

  繰延資産には時価というものがあまりありませんので、貸借対照表上の金額がそのまま資産価値として認識されることが多いです。

  無形固定資産も繰延資産も有形固定資産と同様で減価償却費が計上されていなければ、融資側にて簡単に見破られ、心証が悪くなります。ご注意ください。

 

 

・投資その他の資産

 投資その他の資産は貸借対照表上の勘定科目で、「保険積立金」「出資金」「差し入れ保証金」「敷金」などがございます。

 勘定科目ごとに融資側にて、資産価値があるか確認します。

 

保険積立金の場合には、積み立てた保険を解約した場合にいくら返戻金があるか、満期を向かえた際にいくら保険金が払われるか、保険積立金をしている理由などが確認されます。

 融資側からこれらを聞かれた際にスムーズに回答できるように準備をしておく必要がございます。

 保険の場合に回答でよくあるのが、「知人からの付き合いで仕方なく入っています。」などです。融資側にとって、大切な資金を付き合いで適当に使用されると思われてしまいます。

 「会社に万が一のことが起こってもちゃんと従業員が困らないように、保険に入っています。」など会社のためにしていることが重要なポイントです。

 

 出資金の場合には、投資目的でしている出資金がある場合には融資を申し込む際に門前払いを受ける可能性が高いです。

 融資の利用目的として株関係の投資は該当することができません。ご注意ください。

 

 差入保証金や敷金の場合は、事務所や店舗、工場などを賃借する際に支払われます。

 こちらは、先ほど説明しました土地の時の回答と一緒でその理由などを事業計画に沿って説明ができるように準備いただければと思います。

 また、取引先との保証のために支払っているものがある場合には、その理由を説明できるようにお願いいたします。

 説明の際に、売り上げを拡大するためなどの前向きな理由が答えられるようにしておくのが望ましいです。

 

今回のご説明は以上となります。

引き続き勘定科目の説明と対策を説明していくことになります。

前回と同じですが一つ一つ理解することで会社の数字の理解を深めていただきたいと思います。成功されている経営者様は自社の数字をよく理解されている方が多いです。

弊社でもお客様へ数字のご説明を積極的にさせていただいております。

経営者様は本業での営業で手いっぱいになり、数字を理解するのがおろそかになりがちです。細かいところまで全て理解することはできないとしても、ポイントを絞って理解いただくことは大変重要です。

融資を申し込む際にスラスラと事業の数字を説明できる方が融資担当者にとっても安心して融資実行まで話しを進めやすいです。

 

今後も、融資を受けるために少しでも皆さまのお役に立てる情報を提供して参りますので、ご参考いただければ幸いです。 

 

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