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融資のときに銀行がみる決算書ポイント その1
融資を申し込む際に、融資側では必ず決算書を確認します。
この決算書は融資側にとって、融資を実行するか検討するための大変重要な情報となります。
創業融資の方は融資を申し込む際、決算を迎えていないため、決算書を提出することはありません。しかし、今後、事業をするにあたりどういった決算書の内容だと融資を申し込む際に有利になるのかということを、今のうちから理解していただくと将来の必ず役に立ちます。
どうぞ、ご参考くださいませ。
【決算書とは?】
決算書は大きく分けて「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」に分かれます。
「貸借対照表」は、会社の財務内容を確認するための書類です。
簡単に言うと、財産をどれだけ持っていて、負債がどれくらいあるのかを確認することができます。財産と負債の差額で純資産(資本)がいくらなのかも確認できます。
「損益計算書」は、会社の経営成績を確認するための書類です。
こちらは、会社がどれくらい儲かったのかを確認することができます。
もう少し細かく説明すると、売上から原価を引いた「売上総利益(粗利)」や営業活動でいくら利益がでたかを確認できる「営業利益」などを確認するための書類です。
「株主資本等変動計算書」は、会社の純資産(資本金)がどのように増減したかを確認することができる書類です。こちらはご説明を割愛致します。
融資の際にこれらのうち、「貸借対照表」と「損益計算書」は大変重要な情報となります。
この二つについて、どういったところが大事かをポイントを絞ってご説明いたします。
【貸借対照表】
融資側が貸借対照表を確認するときに第一に確認するのが、債務超過になっていないかどうかです。債務超過になっているかの確認は、純資産がマイナスになっているかどうかですぐに確認することができます。マイナスになっているということは、簡単に言うと資産より負債の方が多い状態です。この状態だと融資を申し込んでも審査が通る可能性はかなり低いです。まずはこの状態を改善した後に融資を申し込むようにする方が良いと考えられます。
この状態をどうすれば、改善することができるかを下記に記載させていただきます。
かなり専門的な内容も記載致しますので、取り組みたい場合には我々のような専門家に確認していただければと思います。
〔債務超過の解消方法〕
1.利益を出す。
債務超過の状態は会社の利益が出ていない状態が多いです。
そのこともあり、支払わなければいけないものを支払えずに負債が資産より高い状態のままとなっています。
この状態を改善するためには、あたり前の話しですが、利益を出して負債を減少するための支払いをしていく必要がございます。
この方法は地道に財務改善をしていく場合の方法です。
債務超過が完全に解消するまで、こつこつ進めていくことが融資を受けるための方法です。ただ、これだと時間がかかりすぎてしまうことが多いです。そのため、完全に解消していなくても負債が減少し財務内容が改善されている方向に進んでいることがアピールできれば、債務超過の状態でも融資を申し込んでみる価値がある場合もございます。この辺の分析は個々の事象によりますので、一概に説明は難しい部分ではございますが、ご相談いただきましたら弊所でも確認することはできます。
2.役員借入金を免除する。
債務超過の会社の場合、役員(社長)などから会社がお金を借りていることがよくあります。これを解消するための方法として役員がこの債務を免除することで会社へ債務免除益を立てる方法がございます。
この方法は、即効性があり効果も高いです。
注意点とデメリットとして、債務免除が計上されるため利益が大きく出た場合には法人税などの税金が発生する可能性がございます。
また、役員にとっては貸していたお金が返ってこなくなるので、社長にとっては損失です。
3.資本金を増資する。
債務超過の状態を改善するために資本金を増資する方法がございます。
こちらは出資をすることにより、資産と負債の差額を解消する方法です。
債務超過が改善されるほどのお金を出資されるので、融資を追加で申し込む必要がなくなるケースもあるかと考えられます。また、債務超過の状態の会社に社長以外で出資をしてくれる個人や会社はあまりいませんので、債務超過を改善する方法としてはあまり採用されづらいと考えています。また、資本金を増資することによって株主が所有している株の価値が増加するため、贈与税が発生するリスクがあります。
かなり専門的な話しになりますので、ご説明は割愛させていただきますが、取り組む場合には税理士へご相談されることをお勧めします。
4.役員借入金を資本金へ組み入れる。
2でご紹介した方法と似ていますが、役員(社長)などが会社への貸付金を資本金に変更するようなイメージです。こちらはDES(デッド・エクイティ・スワップ)と言われる方法です。
役員が会社へお金を貸し付けている場合に、活用することができます。
先ほどの2では債務免除することによって個人が貸していたお金を回収することができませんが、こちらの方法は役員が出資している形で会社へ資金を残すことができるので将来的に個人へお金を戻すことができます。
リスクとしてDESの方法をとったとしても、税務調査にて債務免除益であると指摘をされてDESが成立しない場合がございます。こちらも必要な手続きをして取り組む必要がございますので、税理士などへ事前にご相談をお勧めします。
以上が債務超過を改善するための方法です。どの方法をとるにしても必ず専門家への相談は必須であると認識いただければと思います。
かなり、簡単にご説明をしているため、本来は無駄な税金が発生しないようにするための方法や法律に沿った形で実行するための手続きなど、広い視点で確認し計画を立てる必要がございます。
次は債務超過以外の状態でも「貸借対照表」で融資側が確認するポイントをご説明致します。
〔実質、財産性がないもの〕
貸借対照表上の資産に実質財産として見られないものがあります。
実質的に財産性がないものと判断して財務状況を確認されると決算書上は債務超過の状態でないのに実質は債務超過であると判断されることがあります。
下記に勘定科目を上げてご説明をさせていただきます。
・現金(預貯金ではないです。)
現金が貸借対照表上に数百万円と高額な残高になっているケースがございます。
実際に会社の小口現金や金庫の中身を確認するとそのお金は存在しないことがあります。
なぜこのようなことが起こるかというと、会社の銀行口座から現金を引き出して社長が生活費など経費とならないものを使用した際にこういった状況になります。
理屈をご説明すると複雑になりますので、簡単に言うと社長個人の生活費と会社のお金を完全に切り離して会社の運営できていない経営者様によく見られるケースです。
この状態は融資側では実質資産がないと判断される上にお金の管理がちゃんとできていない会社と判断され、心証はかなり悪くなります。
・棚卸資産
貸借対照表上に棚卸資産が多く計上されていると、融資側では疑ってみてきます。
棚卸資産が多いということは、会社に在庫が多く残っていることを意味します。
仕入れの1~2か月分の仕入れ在庫が残っている場合にはわざと在庫を多く計上していると疑われます。融資側では、これによって決算書上の利益を大きく見せようとしているのではという疑問が発生します。
また、本当に在庫があったとしても、多すぎると売れる見込みがないものとして資産として認識してもらえない恐れがございます。
架空で在庫を大きく計上しているのは論外ですが、本当に在庫が多く残っている場合には、その理由と売るための計画を融資側へ説明できるように準備しておく必要がございます。
今回のご説明はここまでとさせていただきますが、決算書のポイントを引き続きご説明していくようにさせていただきます。
また、「貸借対照表」のご説明も次回、引き続きさせていただきます。
その後に「損益計算書」のご説明を進めていこうと考えています。
融資を受けるために少しでも皆さまのお役に立てる情報を提供してまいりますので、ご参考いただければ幸いです。